つきじだより

つきじだより26

看護学部に入学した新入生は、翌日から1泊2日でオリエンテーションセミナーに参加します。トイスラー博士とも縁のあるポール・ラッシュ氏が開拓した清里(清泉寮)の地で行います。教員も同行しますが、大部分は上級生が主体的に運営しています。
清里へ向かうバスの中では、ポール氏による清里開拓の歴史をアニメーション化した動画を視聴します。動画に登場するトイスラー博士は、火災で何度も焼失した聖路加病院の再建のため、米国で募金活動に奔走し、ポール氏の協力を得ながら新病院建設の資金を集め、さらには清里の開拓にも貢献した宣教医師として描かれています。オリゼミ通して新入生は、聖路加の歴史の1ページに自らが加わる幕を開けることになります。

オリゼミから戻ると間もなく、必修科目の一つである「People-Centered Care Nursing(PCCN)論」が始まります。初回の授業では、学内や近隣を散策し、聖路加国際病院旧館の床や壁に埋め込まれているレリーフ、石標や石碑など、直接歴史に触れます。続く授業では、聖路加国際大学および聖路加国際病院の歴史について紐解きます。法人資料編纂室からの写真をふんだんに活用し、大学と病院の歩みはもちろん、築地居留地の変遷にも触れています。(トイスラー博士に関しては、「自校史と看護師」の科目で講義)。トイスラー博士の理念や、本学が戦争や震災といった困難を乗り越えて歩んだ歴史を伝えていますが、モノクロ写真が現代の学生たちにどれほど響いているのか、気になる瞬間もあります。しかし新入生たちは真剣な眼差しで、ときに驚きの声を上げる様子がありました。感想文には、オリゼミ道中で見た動画と重ね、印象的な言葉が多く綴られていました。いくつかご紹介します(表現は加工済み)。

「日本初の大学レベルの米国式看護教育を始めたことは、トイスラーの"it must be first class"という言葉に表れている。日本初の取り組みをいくつも行い、様々な認定も受けている。私も聖路加のように、自分の夢に向かって目標を立て、有言実行できるよう懸命に励みたい」「戦時下では学校の名前を変えるなど、苦しい時期もあったが、それでも屈せずに進み続ける姿に感動した」「聖路加の一員であることに誇りを感じた」「船上生活者への訪問看護を知り、社会のニーズに応じて看護の形も変化していくことを学んだ」。

4月の新入生は聖路加での学修をこのようにスタートし、教員は先人たちの思いを受け継ぎ、次世代の学生へとつないでいく責任の重さを実感する時間となっています。

(文責:亀井)

オリゼミ2日目 晴れた朝の清泉寮

清泉寮から富士山を望む気温-2℃の4月の朝。